協働のまちづくりとNPO

 いま多くの自治体で「協働」という言葉が使われています。似た言葉に「共同」(一緒に事に関わる。同等に関わる)や「協同」(力・心を合わせて事にあたる)という言葉があります。敢えて「協働」という新たな言葉を使うのには理由があります。
 協働は、「行政とNPOの協働」、「企業とNPOの協働」など、立場が異なる者同士の協力関係で用いられます。英語で言うと、コラボレーションやパートナーシップにあたります。そもそも違う存在同士が、対等に協議、協力し、単独ではできないことをして付加価値を生むことが協働です。「仕事を任せる」とか、「言われたことをやる」なら付加価値は生まれません。外注と協働は異なります。
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なぜ協働で市民やNPOが期待されているのか

 上の図にあるように、本来の協働とは、要望や提案に留まりがちな市民参加でもなく、単なる仕事の外注・請負でもなく、その両面が重なる部分になります。このため、従来の民間企業とは異なる契約の仕方が模索され、委託事業に関する新たなルールづくりなどが課題になっています。協働で「対等性」が重視されるのは、事業の企画段階から実施後まで行政と団体が互いにものを言える関係を目指しているからです。公共サービスの受益者の視点から提案しつつ、専門性を持って事業を担うことによって、従来のサービスと異なる価値や成果を生み出せるのが協働です。NPOと行政の協働が、行政改革の契機になりうる根拠はここにあります。

これからの市民の3つの役割

 市民には、①納税者として公共サービスを受ける受益者として、②政策について選挙などで意思表示をする主権者として、そして③自らが公共のための事業を担う事業者としての3つの役割が あります。
 しかし現実には、行政は予算も人員も限られています。また、公平性などのため市民の要望に全て答えることは困難です。これからの市民は、サービスを利用するだけでなく、サービスの維持・改善のための知恵を出し、公共に参加することが求められます。地域の問題について、クレームではなく、こうしたらどうかと提案していくことです。このような市民参加を進めるには、必要な情報を行政が積極的に市民に提供する必要があります。

協働のステップ

 市民の行政参加を進める上で行政側が留意すべきことは、まず市民の声を聴いて受け止めることです。「その話はうちの課とは関係がない」、「前例がない」と退けるのではなく、どうしたらできるか一緒に考えること、これが協働の出発点になります。
 次に市民ができることは、提案したけれど、すぐに行政が動けない場合に、自分たちでできるところまでやってみることです。そのためにあるのが民間の助成金です。それらを活用して実験をして実績をつくる。その上で再度行政に提案して、「では、一緒にやりましょうか」となるのが協働です。

NPOの自立性を支えるのも市民参加

 行政とNPOが対等な関係を築くには、NPOが市民の声を聴き、市民に支えられていることが大きな意味を持ちます。行政への納税の他、NPOに対しては寄付をしつつ活動をチェックすること、そしてNPOがつくる参加の機会に主体的に関わることが、これからの市民に期待される役割です。

NPOはお客様(与えられる存在)を主役に変えられる

 例えば、NPOが公園や体育施設の指定管理者になると、どのような協働による価値が生まれるでしょうか。それは、サービスの利用者として受け見の立場にあった市民が、その施設の運営に関わりやすくなるということです。利用者の立場もわかり、利用者と同じ市民の目線で対等に話せる市民団体が事業者となれば、「どうしたらみんなが気持ち良く使えるか、みんなで議論しルールをつくりましょう」と呼びかけられます。運営について議論する場、運営参加の機会をつくること、これが利用者を主役に変えるプロセスです。自分たちで決めたルールは守られるし、その施設も、私たち(公)のものという感覚になるでしょう。
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